吃音症状の「ブロック」を回避することがどもりを悪化させるのはなぜ?

吃音どもりの症状でも特に重いのがブロックです。「阻止」とも言われます。もちろん「繰り返し」や「引き伸ばし」も吃音の人にとっては何とかしたい症状ですが、ブロックは言葉自体が出てこなくなるため、一層深刻です。

ブロックの際に随伴症状がみられることがあります。これはブロック状態で発話をしようとするときに何らかの動作が伴うことで、手や足を振ったり「ドン!」と床を蹴ったり、首を動かしたりまばたき・舌打ちをするという様々な表れ方をします。

随伴運動や「工夫」についてもう少し詳しく。

随伴運動

この随伴運動は、専門用語で「工夫」と言われるものの一つです。工夫とは、声や言葉を出すために様々な意図的な動作や意識のことを指します。

1.ゆっくり話すように意識する
2.口を大きく開ける
3.手足を振りながら話す

これらはいずれも工夫ですが、どれが随伴運動であるかおわかりですね?はい、「3」です。発話するために特定の動作が伴っているからです。

この工夫にはいくつかの種類があります。

・解除反応:ブロック状態から脱出するために力をグッと入れる
・助走:ブロックが生じないように、話し始めに「えー」「あのー」などの言葉を入れて勢いをつける
・延期:ブロックが生じなくなるまで話さず間を開ける

人からアドバイスされたか自分で発見したかに関わりなく、こういった工夫や随伴運動を行って何とかどもらずに発話するようになります。

随伴運動をしてもうまくいかないと、やがて回避行動につながる

吃音回避

さらに、これらの工夫を行なってもブロック状態で言葉が出ない場合、やがて「回避」を行なうようになります。その名の通り、言葉を発することやその状況自体を回避する行動を取るようになります。

回避には大きく二つあります。

・発話回避:聞こえないふりや他の人に喋ってもらうようにする
・場面回避:自分が話さなければならない状況や場所に行かない

大抵は、まずは「発話回避」を行い、それでも回避できないことがわかると「場面回避」をするようになります。

この一連の流れをまとめてみると、ブロック症状(阻止)を起こさないために、

ブロックを解消するため「工夫」する(随伴運動など)
 ↓
言葉を発さないように「発話回避」する
 ↓
話さなくてもいいように「場面回避」する

このような対処をするようになります。一見うまい対策法のように感じるかもしれませんが、これらは吃音の抱える重大な症状で、どもりを更に重くしてしまう原因となります。

なぜ「回避行動」は良い対処ではないの?

吃音悪化

これらの回避行動がなぜ良い対処方法ではないのかと言いますと、行きたい場所にも行けない、やりたいこともできないという状況を生んでしまうからです。

吃音が出ないごく限られた、狭い環境の中に自分を閉じ込めてしまうことになるからです。

更に言うと、吃音症状を解消するためのあらゆるテクニックが、実は更に状況を悪化させているということもわかると思います。

随伴運動をして話せたとしても、その一時はそれでいいかもしれませんが、吃音の深みにはまる第一歩を踏み始めたといっても過言ではありません。

「どもらない」ことが最終目標ではないはずです。心も体も自由であり、自分らしく生きることが本当の願いではないでしょうか。発話訓練をすることが、かえって状況を深刻化させてしまうというわけです。

>>発話訓練を行わずに吃音どもりを解消するには

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